The Journey Log of a Jeweler

ひとりのジュエラーによる世界ジュエリー紀行” みて つくって 恋をして "

Bespoke Records03/ Moon Childペンダントトップ (リフォーム)

※2017年納品の作品についての記載です。現在も日本とEU圏を中心に、オーダージュエリーのご依頼を承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

メールアドレス info@ayano-jewelry.com

 

こんにちは、綾野です。

お作りさせていただいたビスポークジュエリーをご紹介するBespoke Records。今回はお手持ちのジュエリーをお預かりしての初めてのリフォーム作品のご紹介です。

リフォームは常に緊張する、宝石は替えがきかないから

お手持ちのジュエリーを新しいデザインに生まれ変わらせるリフォームのお仕事は、ゼロから作るよりもよほど緊張します。なぜならお預かりした宝石を割ってしまうという失敗の可能性があるからです。自分が作った金属のパーツを壊してしまった場合はまた作り直せばいいだけなのですが、割れた宝石はくっつけることはできません。もちろんお預かり時点でそのリスクと万が一の場合の対応方法はご説明させていただきますが、それでも思い入れある宝石を壊したくないというプレッシャーが常に付きまといます。

ニューヨークでの彫金学校留学を終えて日本に帰国してすぐ、こちらのご依頼は舞い込みました。石割れのリスクをご理解くださった上で、駆け出しに大切な宝石を託しチャレンジの機会をくださったこと、本当に感謝しております。

お母様から引き継がれたお石を全く新しいデザインに

リフォームさせていただいたのは写真のお母様から受け継がれたクラシックな指輪とご自身で購入されたという七色のブローチ。こちらを日常遣いしやすいペンダントトップにして欲しいとご相談いただきました。

お名前の中に『朋』という字があることから着想し、月を2つ忍ばせるデザインをご提案致しました。実はそれ以外にもいろんな意味が込められています(プライベートなことですのでひ・み・つ❤️とさせていただきますね笑)。自分が大切にしたい気持ちをオリジナルのデザインで表現できる、これぞまさにピスポークの醍醐味ですね。

このように石枠から一つ一つ手作りしており、当時の自分の実力と比較するとかなり難しい作りで、結局お作りするのに2ヶ月かかってしまいました(いつでもいいからとお待ちくださって…感謝至極です!)。大変なことはわかっていたけれどこのデザインが素敵だと思ったからご提案した、その自分の心意気に拍手であります(笑)。

メインとなる緑色のお石は大切なものなので絶対になくしたくない、とのご要望をお伺いしてより落ちづらい覆輪留めでしっかりと留めさせていただきました。この石留めが最も宝石を割るリスクが高い作業でして、自分の中の碇シンジが「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ。」と叫んでいたことを覚えています。発進―!!!

こうして2ヶ月かかった超大作、大変気に入ってくださって数年後に別のご相談もいただくことができました。ずっと大切に使ってくださっていることがわかって大変誇らしい気持ちです。『作業は一瞬、作品は一生』、これはサボりたくなった自分に喝を入れる時によく唱えているフレーズです。これからも初心を忘れずに邁進します!