The Journey Log of a Jeweler

ひとりのジュエラーによる世界ジュエリー紀行” みて つくって 恋をして "

Bespoke Records01/アヤメピアス&パールペンダント(ウェディングコスチューム)

※2017年6月納品の作品についての記載です。現在もベルギー・アントワープにて、ジュエリーのオーダーを日本とEU圏を中心に承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。
メールアドレス info@ayano-jewelry.com

 

こんにちは、綾野です。

お作りさせていただいたビスポークジュエリーをご紹介するBespoke Records。今回は私のジュエリー制作人生における初のオーダー作品についてご紹介させていただきます。

大親友に依頼してもらったウェディングコスチューム

人生初めてのご依頼は高校から続く親友からのものでした。当時、私は30歳。7年勤めた広告系の仕事を辞め、ずっとモノにしたいと思っていた英語とジュエリー制作のためにニューヨークに渡り、彫金専門学校に通っておりました。それ以前の制作経験は週末に楽しむ趣味程度のものでしたので、「ジュエリーを仕事にしたい、でもそんなこと本当にできるのだろうか…いや、できるようにベストを尽くそう、できることはなんでもやろう。」と懸命にもがいていた時期でした(ブログを始めたのもこの試行錯誤の一環でした)。

そんな中、昔からの友人に「結婚式で身につけるジュエリーを作って欲しい。」という連絡をもらい、またこれで一つ夢に近づいたと本当に嬉しかったことを覚えています。そんな大切なものを本当に私でいいのか…、いや違う、私に頼んでよかったと思ってもらえる仕事をするのだ!と心に誓いました。友人が選んでくれたのは、大好きなティファニーのステンドグラスをイメージして作ったアヤメのピアスでした。シートワックス(写真ピンクのもの)を加工してナチュラルなアウトラインに仕上げています。

また、式当日にも身につけられ、かつ日常遣いもできる、パールのペンダントトップも合わせて作らせていただきました。よりパールが輝くよう周囲に小さなシルバーの玉を一つ一つ取り付けています。式当日はチョーカーとしてつけられるよう、ドレスに合う花のレースをニューヨークのファッションディストリクトで探し回って…。自分では行かない場所に連れて行ってもらえる、オーダーの楽しみを知ったお仕事でした。

ジュエリーは身につけてもらって完成なのだという最大の学び

彫金学校を修了し日本に帰国しだいお届けに伺ったのですが、それまでは自分が身につけるものばかり作っていたのもあり、お渡し前に「こんなに可愛いのができたのに自分はつけられないのはちょっと残念だな〜。」と思ったことを覚えています(ふふふ、若いですね)。ですが、手渡ししてご試着いただいた瞬間、イルミネーションが点灯するように、それまでは静物であったジュエリーに流れるように光が走り、命が宿ったような感じがしました。それはまるで映画ディズニー版シンデレラの魔法にかけられた瞬間のようでした。

ボックスに入っていた時よりも肌にのせていただいた時の方がずっとずっと魅力的で「すごいものを見た。ジュエリーとは、持ち主に身につけてもらって完成するんだ。」と心に刻みました。それ以来、身につけていただくことでジュエリーに命宿る瞬間を楽しみにオーダーをお作りさせていただいております(最近は遠隔でお仕事をすることが増え、なかなか直接お目にかかれないのですが、納品後に身につけた写真を送っていただいてはニヤニヤしております…わがままな職人ですみません笑)。

本番の式にも出席させてもらったのですが、ピアスに合わせてヘアアレンジは花でいっぱいにしてくれ、その美しさに、「自分の仕事が人を美しくして、しかもそれを見ることができるなんてなんて幸せなんだろう。」とずっと感極まっておりました。私はシンデレラじゃなくて、シンデレラの背中を押すフェアリー・ゴットマザーになりたい、ということを強く自覚することができたお仕事でありました。