The Journey Log of a Jeweler

ひとりのジュエラーによる世界ジュエリー紀行” みて つくって 恋をして "

Special Exhibition01/ A NEW ART. METAMORPHOSES OF JEWELRY, 1880–1914/L'ÉCOLE School of Jewelry Arts (パリ)

※こちらの記事は2023年6月〜9月パリにて開催された企画展のレポートです。本施設にご訪問の際は最新の情報をご確認ください。

 

こんにちは、綾野です。

ジュエリーが展示されている世界の美術館/博物館をご紹介する“World Jewelry Quest”、今回は少し趣向を変えて期間限定で開催される企画展のレポートをお届けします。

ジュエリーにまつわる企画展は世界のどこかで常に何かしら行われていると言っても過言ではありません。時代や作者、身にまとったミューズなど切り口は様々あり、企画によって違った視点でジュエリーを見るとその懐の深さと新たな魅力に気付かされます。今回はパリのL'ÉCOLE School of Jewelry Artsにて行われたアール・ヌーヴォージュエリーにフォーカスした企画展のご紹介です。

A NEW ART. METAMORPHOSES OF JEWELRY, 1880–1914

ジュエリーメゾン、ヴァンクリーフ&アーペルが主催するジュエリーの学校レコールでは常時ジュエリーに関する企画展が行われており、オタク心をくすぐるテーマが多くつい足を運んでしまいます。今回は19世紀末から20世紀初頭に欧米を席巻した芸術様式“アール・ヌーヴォー”のジュエリーがテーマとなっていました。会場も当時の雰囲気を感じられるように工夫が凝らされ、美しいものを見たいというマダムたちで平日の開館時間から混み合っていました。

レコールパリの展示会場はあまり大きくはありませんが、学校の教室ほどの空間にこの時期を代表するラリック、ヴェヴェール、フーケ、ファリーズといった巨匠ジュエラーたちの作品がぎゅっと一堂に会しとても煌びやか。個人的には2019年にレコール東京で行われた展示の目玉であったラリックによるシルフィードのブローチを拝むことができて合掌でございました。

作品によっては裏側もしっかり鑑賞できるように設置されており、作り手垂涎。世界中の美術館よ、ジュエリーを飾るときは四方透明のケースで部屋の真ん中に置いていいんやで、よろしく頼むわ。

展示はこの時期に好んで用いられた3つのモチーフ「Fairy-like Nature(夢のような自然)」「Bloomings(開花)」「Abstractions(抽象)」という3パートで構成されていましたが、個人的には「誰が作ったのか?」に興味がありますので作家別に推し作品をご紹介したいと思います。(毎度ながら自分の癖に沿った勝手なブログで恐縮です。)

ラリック、フーケ、ヴェヴェール、、、三神降臨

トップバッターはこの人以外にはいないでしょう、ラリック御大です。

ピンクがかったオパールセントガラスの菊、たまらんな〜うちに来ないかな〜。ツバメモチーフって可愛くなりがちですが、こんなに優美にできるんやな〜、さすが御大であります。3枚目のtheラリックな感じも素敵ですが、4枚目のようなたまに見かける王道ジュエリー系作品はうっとりしてしまう繊細さで御大の底力を感じます。

デザイン画も最高です。1枚くらい所有してみたいものです。

続きましてアルフォンス&ジョルジュのフーケファミリー。オパールのモザイクで輝く水面を表す、天才ですか?そうでした。ジュエリーそのものも良いですが、原型やデザイン画を展示してくれるとワクテカしますよね。いや〜、親子でジュエリーやってるのにまた萌えますね〜。

ヴェヴェール兄弟とウジェーヌ・グラッセのコラボ作品は詩的で心を掴まれます。必死に裏側の写真も撮ったのですが、もっといい写真が公式にありましたのでこちらよろしければどうぞ。このチームですと私はパリのMusée des Arts décoratifsにある「マーガレットのブローチ」が好きですね、ジュエリーやるならロマンチックでないとね!

 

先述の三神と比較すると知名度は下がりますが、今回私がフォーリンラブしてしまったのがこちらです。

1870~80年年代にブシュロンで活躍したエナメル兼宝飾職人Charles Riffault(シャルル・リフォー)による髪飾り。気が狂わんばかりの正確性により生み出される整然とした美。裏側はバラ窓を想像させる美しさ、全方位死角なし。誰や、ダイヤ1個外してしもたやつは!誰かリペアしてくれ!!

この2点も個人的なお気に入りです。こんな櫛にお着物を合わせてパリの街を闊歩してみたい…どんぐりブローチはカシミアのセーターに合わせたい…こんなジュエリーを日常で使えるセレブになってみたいものです。

 

以上、私の独断と偏見によるセレクトをお届けいたしました。もっとみたいという方は文末の参考欄にございますリンクをどうぞ。

この時期の芸術に触れるたびに1886年(今世の誕生年の100年前)に生まれたかったな〜と考えます。幼少期アール・ヌーヴォーの中で美意識を育み、大人になってアール・デコの世界を遊びまわれたらどんなに美しい人生でありましょうか(戦争は嫌ですが)。美しいジュエリーたちに囲まれてそんな妄想をするのも、企画展という作り込まれた世界の楽しみ方の一つかもしれません。

参考

L'ÉCOLE School of Jewelry Arts(パリ)

https://www.lecolevancleefarpels.com/fr/en

レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校(東京)

https://www.lecolevancleefarpels.com/jp/ja

EXHIBITION "A NEW ART. METAMORPHOSES OF JEWELRY, 1880 – 1914"

https://www.lecolevancleefarpels.com/fr/en/exhibition/exhibition-new-art-metamorphoses-jewelry-1880-1914

FIGAROウェブマガジン記事

https://madamefigaro.jp/paris/230816-art-nouveau-01.html