The Journey Log of a Jeweler

ひとりのジュエラーによる世界ジュエリー紀行” みて つくって 恋をして "

Museum05/Museum of Art and Design/MAD/ニューヨーク(アメリカ)

※こちらの記事は2017年に本美術館に来訪した際に書いた内容を加筆・修正したものです。ご訪問の際は最新の情報をご確認ください。

 

こんにちは、綾野です。

ジュエリーが展示されている世界の美術館/博物館をご紹介する“World Jewelry Quest”、第五回はコンテンポラリージュエリーが展示されるMuseum of Art and Design、通称MADをご紹介します。

ニューヨーク・セントラルパークの南西コロンバスサークルにあり、現代のアメリカンアーティストの工芸を評価することを目的として設立されたMADには、主に戦後から現代にかけて950点以上のコンテンポラリージュエリーが所蔵されています。ジュエリーに限らずファッションやポップカルチャーの展示もありますので、コンテンポラリージュエリーとはなんぞや?という初めましての方にもおすすめしたい美術館です。

コンテンポラリージュエリーを知ることができる美術館

私が訪問した2017年時にはティファニー財団のギャラリーがあって、引き出しを引くとジュエリーが出てくる…という面白い仕掛けがされていました(公式ホームページをみてもまだこのギャラリーがあるのか確認できず…最新情報ご存知の方いらっしゃいましたらぜひコメントを!)。コンテンポラリージュエリーに関する企画展も定期的に開催されています。

ジュエリー界の一角を成すコンテンポラリージュエリーというカテゴリーもまた奥が深く一言で説明するのが難しいのですが、「身につけられるアート」と考えていただければとっかかりやすいのではと思います。ゴムや紙など素材を限定せず、メッセージ性があり見る人の感情や思考に影響を与えるジュエリー。希少性と美を追求したファインジュエリーやファッション性を重視したコスチュームジュエリーとはまた違う魅力があります。

Kim Buck, String of Pearls with Gold Lock, 2003, 18-karat gold, silver, 40 x 40 x 4 mm, collection of MAD, New York, photo courtesy of artist

例えばこちらのデンマークの作家Kim Buckの『ゴールドクラスプ付きパールネックレス』(MAD所蔵)。伝統的な真珠のネックレスを凹をつけた7枚のブローチで表現し、この慣習への問いを投げかけています。私の拙い説明では???と思われますので、ここは専門家へバトンを渡したいと思いますが、秋山 真樹子さんが書かれた連載「コンテンポラリージュエリーことはじめ」が非常におすすめですので、コンテンポラリージュエリーにご興味を持たれた方はぜひこちらへどうぞ。

www.jewelryjournal.jp

パーティバッグの祖、ジュディス・リーバー企画展

2017年訪問時、クリスタルを全面に敷き詰めたパーティバッグで人気を博したJudith Leiber(ジュディス・リーバー)の企画展が行われていました。旅先での企画展が自分好みですと運命を感じてより心に残るものですが、この展示もご縁に感謝したものの一つです。

ハンガリーに生まれ、ホロコーストから生き延びハンドバック職人として経験を詰んだ後アメリカに渡りバッグデザイナーとして成功したという壮絶な人生の彼女。凄まじい人生を生きるほど作るものはドリーミィになりがち、という私の仮説を肯定するかのような夢溢れるキラキラバッグたち。一つでもインパクトがあるのに数が揃うとこれまた凄まじい迫力でした。

職人出身ならではの工程へのこだわり、移民ならではの起業家精神という点にも惹かれます。こちら現代も続いているブランドです。買えますよみなさん!!笑

judithleiber.com

自分で身につけたっていいんです

MADでは年に一度「MAD About Jewelry」と題して、現代アーティストの作品が購入できる大規模なイベントが開催されています。また、常設のミュージアムショップでも取り扱われています。身につけるだけでニューヨーカーを気取れそうな個性的なピースたちは自分へのお土産にぴったり。アートの中でも手に届く価格と実用性で敷居が低いコンテンポラリージュエリー、購買することで現代のアーティストを応援できるのも嬉しいですね。

訪問するのが難しい、という方にはMADのウェブコンテンツにも楽しいものがあります。公式HPには所蔵品の中から展示する作品を選定する過程を公開した動画が公開されています。またミュージアムガイドアプリ「Bloomberg Connects」では常設されているジュエリーの中から、見どころである9点の作品が紹介されています。日本のアカウントでもダウンロード可能ですのでご興味ある方はぜひ。

余談ですが、最寄駅のコロンバス・サークルにはTurnStyleと呼ばれるフードホールがあって一人旅のサク飯にぴったりです!セントラルパークと合わせて休日に足を伸ばされてみてはいかがでしょうか。

参考

Museum Art and Design 公式HP

https://madmuseum.org/

コンテンポラリージュエリーことはじめ

https://www.jewelryjournal.jp/author/makiko-akiyama/